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■オススメ Vol.72 

絵本「ひろいかわのきしべ」は、スコットランド民謡と言われている『The Water Is Wide(O Waly, Waly)』の日本語歌詞に、葉祥明が絵を沿える形で作られました。絵本の袖に『「広い河」とは、思い通りにならない人生のことといわれています。たとえ絶望の中でも、想像力があるなら、希望はみつかる……。(以下略)』と紹介されています。

表紙の絵から始まり、ページをめくると明るい爽やかな色合いの多い葉祥明作品と違い、グレイッシュな風景が広がります。途中、歌詞に合わせて「愛」を描いたシーンが華やかに描かれている以外は、灰色かかった河辺の風景が続きます。冒頭 吹いていたであろう冷たい風までもいつしか止み、刻が止まったような不安を伴う静寂が描かれて「絶望」を思わせます。
しかし、見開きに描かれた透明感のある青い風景を境に、光と暖かみがある景色へと変わり。やがて鳥が飛び穏やかな風が画面を流れます。そこには明るさを見いだし世界に「希望」を見いだしたように感じます。

「希望」がある最後の作品まで観て、改めて最初のグレイッシュな世界に目を向けると、暗い調子の中に透けて見える「光」があるのに気がつきます。「想像力があるなら…」冒頭、絵本の袖に紹介されている言葉の中にあるように希望の光は、自分の中の想像力にあるのかもしれません。葉祥明が民謡の中から紡いだ「美しく明るい透明な世界を見通してくだされば幸いです」というメッセージが明確に伝わる素晴らしい作品をご覧下さい。







葉祥明美術館
学芸員 長井香奈
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