葉祥明美術館

オススメ Vol.40「the art of Shomei Yoh」

葉祥明は、1972年に絵本「ぼくのべんちにしろいとり」(至光社)でデビューし、2012年に画業40周年を迎えます。
この記念となる年を前に、作家の軌跡を辿る新しい画集が作られました。
40年の作家活動の中で生み出した作品の数は5000点を越え、今も尚 新たな創作へと向かっています。
これまでに「葉祥明美術館」や「Hart & Art」など様々な画集を発表しています。
どれも大変人気が高く現在では在庫がなく、皆様のご希望に添うことが出来ませんでした。
「画集はありませんか?」という皆様のお声を受けて、40周年を前に画集を作ることができ、大変嬉しく思っています。
この画集には今までも様々な形で紹介されてきた代表的な作品から、今まで紙面には載った事のない秘蔵の作品まで…葉祥明の一様ではない作風を見ることが出来ます。
画集の各章に付けられたテーマは「メルヘン」「ニューランドスケープ」「ポートレート」など作家自信が描く際に区分し、描き分けてきたものです。
どのように考え、描き分けているかなども紹介されています。
葉祥明の作品は、強い主張や強烈な印象はあまりないと言われています。
実際、本人が「自己主張するのではなく、見る人を受け入れる絵でありたい」と「『心揺さぶる』よりも『心穏やか』に見れました…という作品が自分かな」とお話をされていました。
見る人が自分流に解釈をすれば良いとの事ですが、やはり見る私たちにとっては描く本人の思想が気になるところですね。
画集の中では、そんな作家の思想がテーマごとに紹介をされているので、とても分かり易いと思います。「葉祥明」という作家を知る良い作品集になりました。

ここで掲載作品の中でひとつ。
作家自身が予てよりこの作品を何かに載せたい!と切望されており、今回の画集で掲載が叶った作品をご紹介します。
1980年代に描かれた油彩の「静かなる丘」です。この作品への思い…
「家と大地、家がぽつん というモチーフは水彩画と共通しているけれど、色調や渋みがやはり違う。
鑑賞者と向かい合う濃厚な時間に耐え得る深みが、油絵にはある。
画家にとってもそれは同じ緊張感を強いられる。古典的味わいの作品に仕上がった」と作家は語っています。
油絵を描こうと色々なテーマ、表現スタイルを模索していた中で生まれた作品だといいます。
そうして経て描かれた作品は葉祥明らしさを表現しているのかもしれません。

「art of Shomei Yoh ~葉祥明 新作画集展」ぜひご覧下さい。

最後に、この場を借りまして画集制作にあたりご尽力下さいました、株式会社アートプリントジャパンの本間直子様と関口久美子様に御礼申し上げます。
無理な要望にも、誠心誠意とりくんでくださり、素敵な画集に仕上がりました。
ありがとうございました。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2010年9月25(土) ~ 11月26日(金)
葉祥明 新作 画集展
「the art of Shomei Yoh」

葉祥明美術館
学芸員 長井