葉祥明美術館

オススメ Vol.49「こぐまのトムトム」

3月17日より開催の復刻絵本「こぐまのトムトム」展は、葉祥明の画業40周をふり返るのにふさわしい作品といえます。
1987年に“金の星社”から出版されて絶版になっていた“こぐまのトムトム”シリーズ4作品がこの度、絵本塾出版で40周年を記念して再版されました。25年も前に描かれた作品で、葉の作品では多い水彩ではなく色鉛筆を使用して描かれています。また‘ジェイク’や‘はちぞう’と並ぶ、オリジナルキャラクター‘トムトム’は葉祥明のキャラクターの中では珍しく二本足で立ち、洋服を着て擬人化された姿で描かれています。

そんな葉祥明作品の中でも特異な「トムトム」というキャラクターは日本の子供たちに素敵なキャラクターをプレゼントしたいと想いで誕生しました。その名前もリズミカルな響きに子供たちがワクワクすることを願って「トムトム」」と名付けらました。(お話にでてくる妹も「リンリン」。鈴の音のようですね)

本作は「ぼくのいちにち」「ぼくのなつやすみ」「ぼくのあき」「ぼくのふゆやすみ」4シリーズと春夏秋冬を意識して描いているように思われます。しかし‘季節感’ではなく、「幼い子供の一日の生活を表現したかった…。子供にとって日々は毎日が春のようだから。」と葉のコメントを受け、ほんわかとした気持ちが心に広がります。「子供にとっては毎日が春」。外が凍り付くような寒さでも、元気いっぱいに遊ぶ子供達の心の中は「春」かもしれませんね・・・。そして「夏」ではなく「春」と表現するのも‘葉らしさ’です。

トムトムには「この世に今、生きていることを十分味わう家族・家族の愛に包まれて、生きることを学び・楽しみ・味わうことの大切さを身体で憶えるように!」という子供達へのメッセージが込められています。同時に「家族は社会の最少単位での学習の場、家族は人間関係の最初の体験学習の相手、その中で その後の人生の対応対処の仕方を身につける」という『家族』の大切さを全ての人、私たち大人に伝えています。子供たちの心に中に芽吹く「春」を、トムトムを通して触れて下さい。

愛らしく、ほのぼのとした風合い…25年経った今も色あせることなく伝わる物語は、安らぎと微笑みに満たしてくれます。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2012年3月17日(土) ~ 5月18日(金)
絵本「こぐまのトムトム」展

葉祥明美術館
学芸員 長井