葉祥明美術館

オススメ Vol.59「テルモ × 葉祥明のカレンダー 10周年記念 原画展」

優しく穏やかな作風の葉祥明作品は、沢山の方に愛されてきました。いつ見ても何度見ても飽きず、癒される作品はカレンダーとしても愛用されることが多く、販売される物から企業カレンダーまで、多数の作品がカレンダーになりました。中でも、2004年から始まったテルモ株式会社の企業カレンダーは、病院等 日本のみならず世界各国に配布され多く方の目に触れる物となりました。今年で10周年となるテルモカレンダーは、毎年 このカレンダーの為に描き下ろされた作品です。作品自体はカレンダーになった後、一般に公開される事はありませんでした。この度、テルモ株式会社の協力のもと北鎌倉 葉祥明美術館で初めて皆様に紹介出来ることとなり、貴重な機会となりました。

 2004年から2014年のカレンダーの為に描かれた作品は66点にのぼります。毎回テーマやモチーフを提案頂き、そこから葉がイメージをふくらませて描きます。最後に象徴でもある緑の妖精「テルンちゃん」を描いて出来上がりです。

 2009年と2010年は「Around the World」をコンセプトに世界各地を描き、2011年以降は「DEAR PLANET EARTH」をコンセプトに地球の大自然を描いています。国など特定の場所を指定されて描く事は、本来の葉のスタイルではありませんでした。それまでも、ある場所を描いたことはありましたが、葉が自身の中で消化し、再構築した「心象風景」として描かれる事が多く、見る人によって連想する描かれた場所が異なっても「見る人が絵を完成させる」スタイルとしていました。それに対しテルモカレンダーの風景は、特定の場所が明確に分かる描き方をしています。場所が分かるようにするために資料を読み、象徴的な建物や自然を描いています。普段描かない構図やモチーフに苦心をしながらも、描き上げた満足感はひとしおなようです。
この後、特定の場所を描くという依頼が増えていきますが、カレンダーで描いてきた実績が自信となり作風の幅が広がる事となったように思います。
近年では、葉祥明のスタイル(地平線や水平線を描く)ではなく“その場所そのもの”を描くことで、「見る人がその場所にいるような感覚」になる様に描くスタイルとなりつつあります。

依然として心象風景であっても、実際の風景であっても『見る人を受け入れる』包み込む優しさは変わりないようです。
「テルモ×葉祥明カレンダー10周年記念原画展」で優しい世界を旅してみてはいかがでしょうか。

本展開催にあたりご理解とご協力を賜りました、テルモ株式会社様、株式会社ADKインターナショナルの金澤様、株式会社 エス・ケイ・ジェイの雨谷様にこの場を借りて御礼申し上げます。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2013年11月23日(土) ~ 2014年1月24日(金)
「テルモ × 葉祥明のカレンダー 10周年記念 原画展」

葉祥明美術館
学芸員 長井