葉祥明美術館

学芸員のおすすめコラム「パヤタスに降る星」

 葉祥明は熊本県の出身で生まれは市内ですが、よく兄弟達と阿蘇で遊んだと言います。自然豊かな地で過ごした幼少期が、作家としての葉祥明の感性を育んだのは間違いありません。雄大な自然から、庭先に咲く小さな草花まで愛でる葉は自身の作品に、風がそよぐような優しく穏やかな情景を描き出します。画中の風を感じる空間は広く、大自然の営みとそれを支える地球の息吹さえも感じます。そしてこの地球に生きる者として、私達に大切にすべきことを伝えているようにも思います。
 
企画展で開催中の「パヤタスに降る星」はフィリピンのごみ山に暮らす子ども達のエピソードを綴ったお話に、葉祥明が絵を描きました。文章は現地の支援活動をされている山口千恵子さんです。葉は2003年「神の子たちーパヤタスに吹く風」(絵/文・葉祥明_中央法規出版)でもごみ山に暮らす人々の絵本をてがけています。今この絵本を読み返してみると、本展で紹介しているエピソードと変わらず苦しい生活が続いている事がわかります。2016年に出版された「パヤタスに降る星」、10年以上の年月が過ぎてもパヤタスのごみ山は“今”の話しなのです。
 
しかし二つの作品で変わらず紹介されている事がもう一つあります。それが生き生きと、瞳を輝かせる子どもたちの存在です。そんな子どもたちのエピソードを本展でも紹介しています。困難の状況のなかでも優しさや思いやりを忘れずに生きる様子に触れると、日本という豊かな国で日常を過ごしている私達の中の感情が揺さぶられます。この感情を葉は「一人ひとりに触れる関係と共感こそが、地球の平和にとって何よりも重要。パヤタスに生きる人々こそ、実は僕たちの心の救いであり、より人間らしい生き方とはなにかを教えてくれる、そんな気がしてなりません」と書いています。だからこそこの問題はパヤタスだけの問題ではなく「地球全体の問題。人類と文明、そして心の…」と。
 
ひとつひとつのエピソードの最期に著者の山口さんが、読む我々に言葉を投げかけています。少しご紹介します。そのエピソードに葉は「胸がキュンとなるくらい美しく哀しい物語」と語っています。
 
『大切な人が遠くにいってしまったことがありますか?
 その人はあなたに哀しみだけを置いていったのでしょうか?』

 
この問いのエピソードを葉祥明の挿絵と共にご覧下さい。
 
北鎌倉葉祥明美術館企画展 2018年1/20 (土) ~ 3/16 (金)
ごみ山の子どもたちから届いたいのちの贈り物
「パヤタスに降る星」展