葉祥明美術館

学芸員のおすすめコラム【「マザーグース」絵本原画展】

 
葉祥明の新シリーズ「英語のうた絵本」。シリーズ創刊に相応しい題材がお馴染みの「マザーグース」です。イギリスやアメリカを中心に親しまれている英語の童謡集の総称「マザーグース」。 その童謡の数は数百から数千とも言われています。日本でも広く知られる作品も沢山あり、「キラキラ星」や「メリーさんのひつじ」などもその一つです。なかには、日本の童謡にもありますが実は怖い内容のもの、子守歌や物語・なぞなぞや早口言葉など様々な唄の形式があり、多種多様です。その数が数千といわれるのもうなずけます。
 本展では、マザーグースの中から選りすぐりの作品17点を葉祥明が描きました。実は葉祥明、以前にもマザーグースを描いたことがあります。1992年に出版された「ふしぎのくにのマザーグース」(サンリオ出版)。当時を振り返り、葉祥明は「無我夢中で書いた」といいます。1990年代初めは代表的な水彩画での表現だけではなく「かみさまへのてがみ」(サンリオ出版)などのペン画や色鉛筆など、新しい手法を試していた頃でした。色々と苦労があったようです。様々な模索の末、水彩画に落ち着いた技法は成熟していきます。今回はじっくりと考え、自分らしい絵を描く事が出来て良かったと言うように、“葉祥明らしさ”をふんだんに見ることができる作品郡となりました。
 本作の中で一番お気に入りの作品は、と葉に伺うと「ラベンダーの丘の絵」。「ラベンダーはブルー」という唄に添えられた作品です。一面に広がるラベンダーの丘は、広大な奥行きを感じさせ、丘の上の一軒の家とその爽やかな色合いは葉祥明の代表的な作風です。その一方で有名な「ハンプティダンプティ」を描いた作品は塀の上から落ちるハンプティダンプティを描き、普段の葉祥明にはない構図でマザーグースの代表的な世界を再現しています。しかし、その中にも柔らかい可愛らしさとその色合いは葉祥明の世界とも言えるでしょう。葉祥明の新しいマザーグース、是非お楽しみ下さい。
 
また、本展では当館初の試みとして、会場内のQRコードを読み込むと鷲津名都江さんの詳しいマザーグース解説をお読み頂けます。鷲津さんは日本でのマザーグース研究の第一人者。マザーグースについて沢山の著作があります。とても興味深く面白いので、是非ご覧下さい。
 
QRコードの解説を含め、本展実現にご協力下さいました皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。本展にあたたかなご理解を頂いた鷲津先生、またご尽力頂きましたJリサーチ出版の福田様、編集担当・野坂様、ありがとうございました。
多くの方に支えられ、広がる葉祥明の世界。
「楽しい子供の世界を、全ての年代の人に味わってもらいたい」という思いを受けとめて頂ければ幸いです。
 
 
北鎌倉 葉祥明美術館 企画展 2018年7月21日〜9月21日
【葉祥明の「マザーグース」絵本原画展】