葉祥明美術館

学芸員のおすすめコラム【『倉木麻衣×葉祥明』展】

 
歌手・倉木麻衣さんと絵本作家・葉祥明。
異色の組み合わせの二人が倉木麻衣さんの20周年を記念したアルバム『Chance for You』で出会うことになりました。アルバムジャケットに葉祥明が作品を提供し、近年描いていなかった倉木麻衣さんの肖像画を描きました。
ほとんど接点がないようにみえる二人ですが、社会活動を行うという大きな共通点があります。葉祥明は幼少の頃から自然を愛し、青い空を見上げてばかりいる少年でした。熊本県出身の葉は、阿蘇や草千里など自然を身近に感じ過ごします。大人になり絵本作家になっても自然への想いは変わりませんでした。1973年にデビューし、メルヘンブームにのって多忙を極めた氏でしたが、1986年に大きな転機を迎えます。チェルノブイリ原発事故をきっかけに、自身が社会問題や環境問題に対して自身が出来る事は何かを見つめ直します。それまでは「可愛く」「きれい」な人々に愛される作品を目指して描いていました。しかし、事故以後は絵本の中にもっと社会的なメッセージを込めても良いのではないかと考えるようになります。一方、倉木麻衣さんも子供の頃からエコ活動に興味があったそうです。2006年にはワンガリ・マータイさん(2014年にノーベル平和賞を受賞「MOTTAINAI」で話題)との出会いがきっかけに、環境問題をテーマにした音楽活動を展開しています。双方、自身の得意分野を軸に社会活動に従事している。素晴らしい共通点と言えます。葉祥明が著作により様々な問題を提起し考えるきっかけを作り続けるのに対し、倉木さんも自然へ思いを歌った「Diamond Wave」を作る等以外にも、活動的に地震や台風などの被災地を訪れたり、カンボジアで音楽授業や学校建設のプロジェクトに参加するなど尽力されています。
そしてなにより、その活動を通じ多くの方へメッセージを伝える役割を担っておられる。素晴らしいお二人だと思います。
  
 また、両者ともサンリオさんを通じてお仕事しています。倉木さんは2012年、自身がモデルになったキャラクター「マイマイ」で、応援ソング「Stay the same」を作るなどサンリオのイベントにも出演しています。葉祥明は1970年代からサンリオから出版されていた月刊誌『詩とメルヘン』『いちご絵本』への掲載をはじめ、画集も出版しており、現在も『いちご新聞』に絵と詩を連載し続けています。
 
このご縁で、倉木麻衣さんからのお声掛けで実現したアルバム『Chance for You』のジャケットアート。本展では葉祥明のいちご新聞の掲載作品を紹介すると共に、倉木麻衣さんが選んだ好きな葉祥明絵本原画を展示。もちろん、記念CDジャケットに使用された作品も紹介する他、倉木麻衣さんの20年の歩みも記します。
 

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20周年記念の集大成であるシングルコレクション「Mai Kuraki Single Collection〜Chance for you」。そのタイトルにもあるように倉木麻衣さんが大切にされている曲の一つに「Chance for you」があります。倉木さんが書かれたこの詩をじっくり読んでいくと、葉祥明の綴る言葉と通じるものが多く不思議な縁を感じました。「最初の一歩踏だしてみよう」「勇気を持って君を生きてみようよ」「僕はいつでも そばで見てる」(倉木麻衣「Chance for you」より)これらのフレーズを読んで、葉祥明の絵本『ヒーリング・キャット』の言葉を思い出しました。この本はブルーキャットという猫が読み手に寄り添い言葉をかけてくれます「ひとつ ひとつ やっていけば、いいんだよ」「自分らしく生きるのが いちばん いいんだ」そして最後に「ぼくは、いつでも きみの すぐそばに いる からね」(絵本「ヒーリング・キャット」2004晶文社刊より)と。
30代の倉木麻衣さんと70代の葉祥明。世代を越え、ジャンルを超えて伝えたい思いがリンクし、人々に笑顔を届けます。そしてこの度、その二人の作品が出会う事になった奇跡を本展でご覧頂ければ幸いです。