葉祥明美術館

おすすめコラム【マザーグースⅢ】

 葉祥明の“英語の歌 絵本”『マザーグース』。2018年に第一弾を発表してから、翌年2019年には第2弾、2020年に第3弾と1年に一冊のペースで、シリーズとして発表されました。このシリーズは全3作となり、本作で完結となります。
 
「リズム編」として編集された第3弾は、韻を踏んで繰り返しリズムをとる歌などが選出されています。鷲津名都江先生の翻訳による歌詞を読むと、その内容は少しシュールで、くすりと笑ってしまうような言葉遊びが見て取れます。葉祥明はそんな歌詞を読みながら、読み手に伝わり易くという思いで、言葉の意味を拾いながらシンプルに描きました。そして物語を優しく穏やかな葉祥明ワールドに落とし込み、仕上げます。途中、鷲津先生にマザーグースの世界をより詳しく教示頂きながら、編集者と一緒に一冊の絵本が完成します。時に何度も描き直しながら、他者のアドバイスを得ることで、葉祥明作品だけど一味違った「マザーグース」の世界を作り出しました。表紙絵もそのひとつです。ピンク色の画面に、マザーグースの歌に登場するモチーフがちりばめられ、おもちゃ箱のようです。「絵本らしい表紙になった」と葉祥明自身も楽しんでいました。一方で、葉祥明らしいスタイルの作品も大切に描かれています。「Boys and Girls  さあさ みんな出てこい!」の夜空の作品は、葉が好んで描く紺色のグラデーションが美しい作品です。画面から光を放つ奥行きと透明感のある“青”は「描いていて気持ちが良かった」と作家も話します。
 
 葉祥明らしく、でも一味違う。葉祥明という作家はまだまだ描いていない引き出しが在るのだと感じます。前回の企画展で紹介した『宇宙からの声』と『マザーグース』は印象がまったく異なります。他にも北鎌倉葉祥明美術館で随時、観ることができる油彩やデッサン、デビュー前の作品など一人の作家が生み出す様々な世界は飽くことなく魅了します。
 
 コロナ禍において、沈みがちな気持ちを「マザーグース」の楽しい葉祥明作品が癒しのひとときとなれば、幸いです。
 
 
■北鎌倉 葉祥明美術館 企画展 2020年11月28日〜2021年1月27日
企画展「葉祥明の世界の名作絵本シリーズ『マザーグースのうたⅢ』展」