葉祥明美術館

学芸員のおすすめコラム【夏の一枚】

 
今回のオススメは常設展示中の「銀河鉄道の夜」です。
「常設展・夏」で階段に展示している本作は、2017年に描かれました。2017年の夏に、岩手県花巻市にある萬鉄五郎記念美術館にて「葉祥明原画展」を開催した際に、描きおろした作品です。花巻と言えば童話作品『銀河鉄道の夜』の作者・宮沢賢治の出身地でもあります。「開催地に向けた作品を…」と葉に依頼したところ本作「銀河鉄道の夜」が描かれました。
元々、名作の世界を葉祥明ならではの世界観に描く仕事をいくつもこなしていました。『名作の中のお菓子物語』(朝日学生新聞社刊)もその一つですが、こちらは2階奥の部屋で紹介していますので、是非ご覧下さい。原作のイメージを壊すことなく、葉祥明のフィルターを通して温かみを増して描かれる作品は、さらなる魅力が加わった名作です。
 「銀河鉄道の夜」は、無数の星の中を鉄道が走る様が描かれています。夜空、惹いては宇宙は葉祥明が好んで描く題材でもあります。その星は、細い筆でひとつひとつ点を置いていき、そして明るい星には重ねるように筆を置いていきます。その作業を何回も何十回も繰り返す事で、奥行きのある広大な星空が出来上がります。当時、葉祥明は「手が腱鞘炎になった」と話していました。根気のいる作業が素晴らし作品を生み出しました。
 
本作を最初に出展した折に葉祥明がこんな言葉を寄稿しています。
「明治時代の宮沢賢治と、現代の日本に生きている自分の間に、共通するものは何だろう?100年を越える年月と、変化し続ける社会を取り払って、変わりないものに目を向けると、星空が浮かんだ有名な童話「銀河鉄道の夜」。たびたび、絵本化され、アニメ化された。その壮大さ、ロマン、これなら描ける!大銀河に向かって夜空を駆け上がる汽車。この絵を観ているあなたも乗客です。いざ出発!(葉祥明)」
 
星の瞬く夜空を走り、宇宙にまでのびてゆく広い世界をお楽しみ下さい。
 
 
北鎌倉 葉祥明美術館 常設展・夏 2019年7月1日〜9月末日
 
葉祥明/水彩画/2017/「銀河鉄道の夜」