葉祥明美術館

学芸員のおすすめコラム【花のすきな おおかみ】

 
 きむらゆういちさんと葉祥明、二歳違いで同世代の二人の絵本作家は、これまでに沢山の絵本を発表してきました。
 きむらゆういちさんの代表作は1988年の発売以来愛され続けている「赤ちゃんのあそびえほん」シリーズをはじめ、映画・舞台・アニメと幅広い展開をみせた『あらしのよるに』が有名です。この『あらしのよるに』は絵を あべ弘士氏が描き、独特の世界観をつくりました。自身で絵と文を作るオリジナル絵本以外にも、個性あふれるストーリーを書き、多くの作家とコラボレーションなさっています。
 同じく葉祥明も自身の創作絵本だけでなく、他の作家の素敵なお話に絵を提供し絵本を作ってきました。同じ世界で活躍してきた二人は、お互いを見知った存在ではありましたが、共著はありませんでした。しかし昨年(2019年)にきむらゆういちさん主宰の絵本講座イベントに葉祥明が参加したことをきっかけに、急接近します。そのイベントに同席していた新日本出版社の田所社長が、二人の作家のそれぞれの“おおかみ”を題材にした絵本をご存知でした。前述の『あらしのよるに』と葉祥明の『しろいおおかみ』(佼成出版社刊)です。2つの作品に感銘を受けていたこの方が、二人の“おおかみ”の絵本を作ったら、素敵な作品が出来上がるのでは!という強い熱意で、共作が進んでいきました。きむらゆういちさんが描くストーリーは葉祥明の画風に寄り添った優しいお話に、葉祥明が描く場面はきむらゆういちさんの個性や思いやりを綴った内容を汲んだ柔らかい作品に仕上がっています。
二人の巨匠がお互いに寄り添った作品は、優しさ・個性・いじめ、そして「愛」を伝える素敵な絵本になりました。
 
 人と人との出会い、それを繫ぐ人、全ての出会いがさまざまなものを生み出します。昨今、コロナウィルス感染症予防でソーシャルディスタンスが提唱されていますが、作品を通して、出会い・得られるものも大切にしたいですね。
 
 
葉祥明の言葉です

「願わくば 何事があっても動じることなく 
 常に思いやりの心で 全てのものと 
 接することが できますように…」

 
非常時だからこそ素敵な作品にふれて、気持ちにゆとりを感じて頂ければ幸いです。
 
 
北鎌倉 葉祥明美術館 企画展 2020年6月1日〜2020年8月31日
【新作絵本原画展「花のすきな おおかみ」】