葉祥明美術館

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葉祥明の描く風景は、広大な大地に広い空、そこにある空気や吹く風を感じる空間が広がっています。その中に、ぽつんと描かれる小さなモチーフに意識がいくと、画面の世界にグッと引き寄せられるように感じます。まるで自分も広大な風景の中にいるかのようです。
そんな作品を前にすると「この絵は何処を描いているのだろう」と疑問が湧きます。美術館にご来館された皆様からもご質問を頂戴することもしばしば。「根底には故郷の熊本・阿蘇の風景があるようですが、特定の場所ではなく、心象風景です。」とお答えすることが多いですが、中には軽井沢・カナダのプリンスエドワード島・イタリアのトスカーナ地方、そして北海道の富良野など 特定の場所を描いた作品もあります。
 開催中の企画展「葉祥明の雄大な風景画展 Holy Hill」は、富良野を描いた作品群です。本展は画集『Holy Hill』の掲載作品を紹介していますが、この画集は富良野にお住いの方が、葉祥明の作品の中に富良野の景色を感じ、改めて富良野をテーマに絵を描いて欲しいとの依頼から制作されました。春夏秋冬、広い大地と広い空、爽やかで優しい風景が葉祥明らしさと癒合し、雄大な作品が生まれました。
 
 制作の依頼を受けたのは北鎌倉葉祥明美術館が建つ(1990)よりも前、一通のお手紙からでした。当時自身の作品から、世の中のために何か出来ないかと模索している最中でした。以前より、ピーターラビットの作者が湖水地方の美しい景色を守るために土地を買い、英国ナショナルトラスに寄付したと言う話しに感銘を受けていた葉祥明は、まったく同じ事は出来ないけれど、美しい風景を作品に残し、伝えることで観る人がその価値を再認識し、大切にするきっかけになれば素敵だなと思っていたのでしょう。富良野の方から依頼があった時には、その素晴らしい場所を描きましょう!と話しが進んだようです。
 制作された作品を使い、お皿やカップなどの陶器も作られ、葉祥明の富良野の景色が生活を彩りました。その後、世界観がふくらんだ富良野の作品群が画集『Holy Hill』(1998)として集約されました。
 改めて雄大な景色を確認し、その場所や守りたい素晴らしい場所に想いを馳せてください。
 
 現在でも画集『Holy Hill』は手にすることができますが、残念ながら陶器類は現物が残っておらず紹介することが叶いませんでした。ですが画集の他にCDやポストカード等、当時製造したグッズをミュージアムショップにて販売します。数に限りがありますので、ご要望の方はお早めに。
  
 

 
■北鎌倉 葉祥明美術館 企画展 2024年6月8日〜8月9日
葉祥明の雄大な風景画展「Holy Hill」