葉祥明美術館

オススメ Vol.05

今回のMy selectionで、私は”touch of gray”を挙げます。

まずは、じっくりこの絵をご覧下さい。
すっと延びた地平線の中央に、ぽつんとそびえ立つ灯台。
葉祥明の絵でもよく見られる構図です。

このタイプの絵は”ニューランドスケープ”といいます。
最も葉祥明の内面が表れていると言っていい世界です。

これら風景を描く時、彼はまず空から描き始めます。薄い色からのせていき、何回も何回も丁寧に塗り重ねていきます。その入念な動作の繰り返しによって、あの様な動きのあるグラデーションの美しい空となるのです。そして風景の下に延びる地平線。どこまでも真っ直ぐに続くこの大地を彼はフリーハンドで仕上げます。

葉祥明はその美しい色使いが特徴の画家でもありますが、極めて色の少ないこのような世界こそが彼本来の絵なのかもしれません。”touch of gray” 白とグレーの美しいモノトーンの世界。
どうぞ、画家自身の姿をゆっくりご覧下さい。

葉祥明美術館
学芸員 祢津