
葉祥明の作品に用いられる色彩には、見る者の心をやわらかく包み込むような温もりがあります。海の青、大地の緑、紺碧の空――そのいずれにも作家ならではの穏やかなまなざしが息づいていますが、とりわけ黄色は、色そのものが持つ明るさや温感によって、いっそう豊かな親しみを感じさせます。葉祥明の画面に広がる黄色は、イエロー、イエローオーカー、オレンジイエローなど、微妙に異なる色調を重ねながら、それぞれに異なる表情を見せています。
本展示では、「春夏秋冬」「太陽の輝き」「Yellow House」など、さまざまな主題のもとに、全24点の作品を紹介しています。その中から今回は、葉祥明が描く「黄色の世界」を読み解くうえで、多くの要素を含んでいる作品として、「花馬車と羊さん」を取り上げます。
本作は1970年代に描かれた作品です。画面には、花畑にたたずむ少女と少年、遠景の黄色い丘に集う羊たち、そして太陽の光を受けて淡く黄色に染まる空が描かれています。画面全体を満たす黄色は、単なる色彩効果にとどまらず、作品の空気そのものを形づくる重要な要素となっています。
葉祥明は自然を主題とすることが多く、とりわけ花畑を描く際には、黄色い花々がしばしば登場します。作家にその花のイメージを尋ねたところ、「菜の花やタンポポをイメージしている」と語られました。菜の花やタンポポは、私たちの日常の風景に親しく咲く身近な花です。葉祥明の作品にどこか懐かしく、穏やかな印象が漂うのは、そうした身近な自然を慈しむ作家の姿勢と深く結びついているのでしょう。
また、作家にとって「黄色」が何を連想させる色であるのかを伺うと、「太陽」「光」「熱」「命の輝き」「天国」「愛」「優しさ」といった言葉が挙げられました。「花馬車と羊さん」の画面にも、花畑の柔らかな優しさだけでなく、太陽の輝き、生命の温もり、そして見る者を包み込むような愛の気配が息づいています。
季節が進み、木々がやがて黄色に色づいていくこの時期に、葉祥明が描き出す「黄色の世界」に目を向けることは、自然の移ろいと作品世界とを重ね合わせて味わう、またとない機会となるでしょう。光と温もりに満ちたその色彩の響きを、どうぞごゆっくりご鑑賞ください。
■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2005年9月24日 (土) ~ 11月25日 (金)
「Yellow Yellow -黄色の世界-」