葉祥明美術館

オススメ Vol.28「しあわせってなあに?」

現在 開催中の絵本原画展「しあわせってなあに?」は2002年に、葉祥明おなじみのキャラクター、ジェイクを主人公に描かれた絵本です。

舞台は葉祥明が故郷の阿蘇以外で「世界で一番好きな場所!」というニューヨークのセントラルパーク。いつかここを絵本にしたいと思い、公園の資料を集めていました。1970年にNYに留学してから、その場所に魅せられてから年月が過ぎ・・・2001年9月11日、ワールドセンタービルのテロが起きます。この出来事をきっかけに改めて、葉自身 人間の幸せや人生・いのち・家族について深く考えたと言います。そして以前よりあたためていた想いと共に、生まれたのが絵本「しあわせってなあに?」です。

1970年代にデビューした当初、葉祥明の描く絵本は子どもたちのための、美しく愛らしく平和で優しい世界でした。しかし1986年のチェルノブイリ原発事故以降、子どもたちに「この世界を少しでも良くしたい」という思いが強くなり、いろいろな社会的テーマの絵本を作るようになりました。
そしてまた2001年の9.11テロ・・・
多くの画家がそうであるように、葉祥明もまた時代を反映している作家と言えます。

さて、絵本「しあわせってなあに?」の制作背景にテロという事柄がありながらも、この作品は友だちとお話しをしながらのほのぼのとした作品です。

この絵本には特徴があり、主人公のジェイク以外にも、彼(ジェイク)が出会う友だち全員に名前が付いています。猫のダニエル、リスのキキ、アライグマのサムなど10匹以上の友だちが登場します。

葉に彼ら(彼女ら)の話を聞くと「亀のオズボーンはね、物知りで学者肌で紳士!アヒルのメアリーおばさんは?気で面倒見がいい。ジェイクの新しい友だちのグレイスは…初めてのガールフレンド、賢く優雅で、以外とお茶目」とセントラルパークに住むみんなが生き生きと動き回る様子が目に浮かびます。葉の多く手がけた絵本の中でも、全ての登場動物に名前が付いているのは珍しいですが。これは単に、各の生き物ではなく「一匹一匹が性格を持ち、考えがある。それぞれが唯一無二の存在だ」ということを知って欲しいという作家の想いが込められているのです。
作品を観ながら、ジェイクと一緒に沢山の動物たちとおしゃべりをお楽しみください。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2008年7月26日 (土) ~ 9月28日 (金)
葉祥明・絵本原画展「しあわせってなあに?」展



葉祥明美術館
学芸員 長井