葉祥明美術館

オススメ Vol.33「ジェイクとふうせん」

企画展示の「ジェイクとふうせん」は2002年に出版された「しあわせってなあに?」以来のジェイクを主人公にした絵本です。7年ぶりになるジェイクの新作に、読者の皆様同様、私共も楽しみにしていました。

私が最初にこの作品の姿を目にした時は、まだ文章は出来ておらず「みてごらん」と言う葉祥明さんのお誘いで、拝見しました。一枚一枚、作家自ら作品をめくり、ゆっくりと現れる作品は愛らしいものです。お話しはなくとも優しいストーリーを感じる「紙芝居」のようで、出来上がるのがますます楽しみなっていました。

その後「ストーリー」を目にしたのは原画展の準備を進めているごく最近。出版の担当者の方に文章を送って頂き、文字のみでお話しを読みました。「絵」と「文」、別々に見たわけです。絵を見た時同様に、文字だけでもまた微笑ましく、愛らしいのです。
これは絵本になって、絵とお話しが一緒になったら可愛さ倍増です!

今までのジェイクシリーズの絵本のなかでも、ほのぼのとした可愛らしさも増しているように思います。「ジェイク」と「ふうせん」、そして「ちょうちょさん」の会話で進んでいくお話しを、是非この機会に出来たての原画と共にご覧下さい。

【皆さんによくご質問いただく「ジェイク」についてのお話し・・・】


よく「ジェイクは何犬ですか?」というご質問をうけます。
ジェイクは1972年に出版された「ぼくのべんちにしろいとり」という絵本で初めて登場します。この絵本のお話は葉祥明さんがサンフランシスコの公園で白い鳩を助けた自身の体験がもとになっています。このエピソードを絵本にする時に「動物中心の平和な世界」を思い描き、人(自身)ではなく犬になりました。それも架空の犬です。
お気づきでしょうか…ジェイクの耳は紺色です。主人公の犬をデザインする時にビーグルがもとになりました。でもあの有名なスヌーピーもビーグルですね。ちょっと似てしまいます。緑の公園に合う色で、白い犬をイメージしていたので、色は決まっています。そこで耳と顔と胴をのばして……ダックスフンドのような犬にしたのです。体が白で耳が紺色のダックスフンド、まさに「架空の犬」ですね。

当時「ぼくのべんちにしろいとり」は先にイギリスで出版され、その後日本で出版されます。日本版では「犬さん」でしたが、イギリス版では「JAKE」。あちらが勝手につけたそうです。
でもこれがいいなあと…。それで現在の「ジェイク」がいるのです。
葉祥明さんの分身、白い空想の犬ジェイク誕生お話しです。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2009年7月25日 (土) ~ 9月25日 (金)
新作絵本「ジェイクとふうせん」展



葉祥明美術館
学芸員 長井