葉祥明美術館

オススメ Vol.35「人物画展」

かわいい・爽やか・穏やか・やさしい…そんな風に表現される事の多い葉祥明の作品。
メルヘン画家・絵本作家として多くの作品を世におくりだしています。そんな作家も、最初から絵本作家を目指したわけではありませんでした。実家が飲食業を営み、自身も大学では経済を学んでいました。そんな中、大学生活も最後の年となり周囲が就職活動をしていく中、自身の人生を考えていきます。

エッセイ「僕と風との対話」(佼成出版)の中でこんなことを書いています。
『僕は、二十二歳で自分を知ることをはじめた。もう、〈皆と同じような生き方はしない!〉そう決心した。たとえ道険しくとも、だ。迷い、不安も感じながらも、〈自分だけの人生を生きよう!〉〈自分だけの道を往こう!〉と。そう決めた僕は、真剣に考えた。〈自分には、いったい何ができるのか?〉〈自分は、いったいどうしたいのか?〉〈僕は、どんな人生を送りたいのか?〉。”職業や働く”という生計の手段と、自分の”生き方”を僕は明確に切り離した。自分の人生と生活がまず第一にあり、そのために働く。就職とは、自分の人生(という時間)の多くを、他者にゆだねることになる。僕は、自分の自由がきくフリーランスのイラストレーター(挿絵画家)を職業に選んだ。』

こんな決心の後、大学在学中にデッサンスクールに通い売り込みにいきます。
ですがなかなかうまくいかず、卒業後にニューヨークのアートスクールに留学をし学んできます。エネルギッシュでファッショナブルな空間に身を置き、その作風もまたスタイリッシュなものでした。ファッションイラストレーターを目指し、人物を多く描いているのもこの頃です。帰国後、ある絵本との出会いをきっかけに絵本の道へと歩んでいきます。
メルヘン画家・絵本作家の葉祥明として活躍していく中でも、「人生」「自分」への探求は続いています。探求の中、様々な詩人、思想家、哲学者etc.の書物を読み、時に映画からも様々な事を学んでいきます。そんな感銘を受けた人物を深く学んでいく中で、彼らのデッサンも描いています。
今回の展示では、絵本作家としてデビューする前の作品から、その後に描いた人物画など「人物」に焦点をあてています。
その優れたデッサン力・観察眼は現在の代表的なシンプルな作風が、奥深く広大な世界観を感じることの出来る由縁を知ることができます。代表的な作風とは異なった作品をご覧ください。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2009年11月28(土) ~ 2010年1月22日(金)
葉祥明が描く「人物画展」

葉祥明美術館
学芸員 長井