葉祥明美術館

オススメ Vol.37「地雷ではなく花をください」

絵本「地雷ではなく花をください」は1996年に出版され、現在にまで再版に再版を重ね、たくさんの方に読み継がれています。
「続・地雷ではなくはなをください」「続々・地雷ではなくはなをください」「ありがとう地雷ではなく花をください」「心をこめて地雷ではなく花をください」と全部で5部作になり、主人公のうさぎのサニーちゃんはカンボジア・ボスニア・アフガニスタンなど様々な地雷のある地に行き、メッセージを伝えてくれます。
この絵本は葉祥明の代表作のひとつです。
一作目だけでも30万部を超える絵本が皆様の手に渡り、読まれてきました。
そのため、当館以外の場所で原画展をする際には「必ず」と言っていいほど展示されてきました。
ですが…気がつけば葉祥明美術館で原画を展示するのは、10年以上でしょうか…時が経ってしまいました。当館でサニーちゃんを展示するとても久しぶりの機会です。
是非、この機会にご覧下さい。
出版より14年経った今も、その内容は…残念ですが現代の問題でもあります。
改めてこの作品を見直し、世界中の子供や動物たちが安心して住める地球への取り組みを考えるきっかけになれば幸いです。

さて、前述のように既にたくさんの方にお読み頂いている絵本ですが、この作品の誕生について…以前の葉自身が話した事をご紹介します。

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…以前…ウィーンの国連ビルで展覧会をした時、国連大使の方に昼食会に誘われました。
そこで、国境沿いにいっぱい武器弾薬が隠してあるとか、第二次世界大戦中の不発弾とか地雷とかが今も出てくるなど、戦争と平和の話をしたんです。その時「絵本で描くとすればそういう危険な物がお花になるっていう素敵なお話ができますね。」って言いました…。
帰国して数週間後に、難民を助ける会が地雷キャンペーンをするから絵を描いてください、原作はあります、と頼まれました。
その時は、地雷をとってその後に果物とか野菜とか食べられるものを植えましょうっていう話でした。
それは必要なことなんですけどね、ただ絵本にするときにはそれよりもお花になるほうが素敵だなって事は僕は思っていたから、タイトルに「花」、お話や絵の表現としても「地雷ではなく花」になったわけです。

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他にも、この作品についてたくさんのインタビューを受け、お話をしています。
当時、今この時にも地雷の犠牲になっている人がいる!といわれ「1時間に3人も地雷で亡くなっていると思うと居ても立ってもいられず、それ以前よりも早いスピードで集中して絵を描くようになりました。」とも語っています。
地雷シリーズの4作目「ありがとう地雷ではなく花をください」では、お話の中で「地球上に残った最後の対人地雷を壊す日」がやってきます。
それは21世紀…22世紀…いつの事でしょう…サニーちゃんと葉祥明、そしてみんなの夢です。
その夢が叶うようにたくさんの方にこの作品のメッセージが届くことを願っています。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2010年3月20(土) ~ 5月21日(金)
絵本原画展
「サニーのお願い 地雷ではなく花をください」

葉祥明美術館
学芸員 長井