葉祥明美術館

オススメ Vol.46「Imagine and Voice あなたとともに」展

2011年は、浄土宗の開祖である法然上人の800年大遠忌にあたります。大遠忌(だいおんき)とは、法然上人が亡くなって800年ということです。これを迎えるにあたり、さまざまな記念事業が展開されていますが、その一環として浄土宗の監修のもと、仏教の経典を元に3作の絵本が制作されました。
「阿弥陀経」から『Call my name ~大丈夫、そばにいるよ~』、「無量寿経」から『For Your Everything ~ありのままで~』、そして「観無量寿経」から『Imagine and Voice ~あなたとともに~』です(いずれも角川学芸出版刊)。最初の絵本「Call my name」の出版は2009年でしたので、2011年に「Imagine and Voice」完成し、3年がかりの3部作制作となりました。
葉は絵本を描くときに、たくさんの資料を読み、様々な知識を吸収して後 作品を生み出していきます。今回の制作も同様に、制作に携わった関係者の皆様の協力の下 浄土宗の資料など読み、制作にあたりました。葉自身「今回の出版の話をいただいて、あらためて仏教やお念仏に触れることができました。」と語っています。一方で長い歴史を持つ仏教の精神世界を「絵本」に いかにまとめるかに苦心もしたようです。

出来上がった作品は、葉祥明らしい作品に仕上がりました。「浄土の世界は、このような明るい美しい世界かもしれない…」と感じたものを描いたといいます。

今回、展示をしている「Imagine and Voice」は3作目の作品です。「観無量寿経」を元にした作品ですが、「観無量寿経」とは浄土三部経と呼ばれる浄土宗の大切なお経のひとつです。
その内容は、お釈迦様が在世のころのお話です。王舎城の町には 頻婆娑羅(びんばしゃら)王と王妃の韋提希夫人(いだいけぶにん)が住んでいました。
二人には世継ぎがおらず、占い師にみてもらうと、山にいる仙人が王子に生まれ変わるとのことでした。これを聞いた王は、仙人の寿命が尽きるのを待ちきれず、王子が生まれるようにと仙人を殺してしまいますが、仙人は復習を誓いながら死んでいきます。
その後、王子が生まれるのですが、仙人の復習が恐ろしくなった王は、建物の高い所から王子を産み落とさせ殺そうとします。しかし王子は、一命を取り留めます。この王子を 阿闍世(あじゃせ)と言います。
成長した阿闍世王子は、釈尊の地位をねらう、提婆達多(だいばだった)にそそのかされて、父の頻婆娑羅王を牢屋に閉じ込め餓死させようとします。
それに対して王妃韋提希夫人は、見張りに見つからないように王に食べ物を運んでいましたが、これを知った阿闍世王子は激怒して、別の牢屋に閉じ込めてしまいます。
牢屋に閉じ込められた韋提希夫人は苦悩と悲しみをお釈迦様に助けを求めるのです。
これに基づいて説かれたのが『観無量寿経』です。お釈迦様は韋提希夫人の悲しみを和らげ、極楽浄土に往生するための法などを説かれています。

絵本「Imagine and Voice」ではその内容が、お釈迦様と悩みをかかえる女性との対話で描かれています。
今に通じる悩みや苦しみを、現代に生きる我々に分かり易い言葉で表現し直されたこの作品は「観無量寿経」の伝える人々を救いに導く希望の世界を伝えてくれます。
ただ難しいと敬遠しがちな事です。葉自身こう言います。「初めからすべての人に理解していただけるかはわかりません。ですが、この本を見て『きれいだな』『見ている間にほっとする』そんなふうに思っていただければ幸いです。」と。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2011年9月24日(土) ~ 11月25日(金)
「Imagine and Voice あなたとともに」展

葉祥明美術館
学芸員 長井