葉祥明美術館

オススメ Vol.51「ぼくのべんちにしろいとり」

2012年の今年、画業40周年を迎えた葉祥明のデビュー作・絵本「ぼくのべんちにしろいとり」(至光社刊)の原画展を開催しています。
「ぼくのべんちにしろいとり」は葉祥明のオリジナルキャラクターのジェイクが、初めて登場した絵本であり、国際絵本としてイギリス・フランス・スウェーデンなど海外で出版され広く親しまれた作品です。
葉祥明ファンの間では、あまりにも良く知られたエピソードですが 初めて’ジェイク’に出会った方の為に・・・絵本誕生の秘話を。

葉は大学卒業後、ニューヨークへ留学します。勉強の傍ら公園を散歩中、弱りきって飛べなくなった鳩を見つけ、助けてあげたそうです。その出来事が絵本作家を目指そうとしたとき、浮かび「ぼくのべんちにしろいとり」が生まれました。
ジェイクはいわば「葉祥明の分身」なんです。

またこの絵本には、葉の故郷への思いも込められています。幼少期を熊本で過ごした葉は、四季折々の阿蘇の自然に触れて育ちました。実は「ぼくのべんちにしろいとり」の中に、ひとつだけ青空に草原を描いたシーンがあります。これは少年時代に見た景色が原風景として心の中にあり「心の故郷・阿蘇」がイメージの元となっています。その後 野原を多く描く原点ともなった作品でもあります。

現在も描き続け、その作品数は六千点以上になります。
その原点となる作品から、現在に至る作家のメッセージを読み解いてください。環境問題や社会問題に関する絵本も多く描いてきた作家・葉祥明。
ほのぼのとしたデビュー作の中にも公害を危惧する心も見え隠れします。

夏の暑い日に、緑に包まれた作品の中で涼やかな気持ちになりたいものです。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2012年7月21日(土) ~ 9月21日(金)
画業40周年記念・葉祥明デビュー作
「ぼくのべんちにしろいとり」展

葉祥明美術館
学芸員 長井