葉祥明美術館

オススメ Vol.57「オレンジ色のペンギン」

葉祥明美術館は北鎌倉にあります。アスファルトに囲まれた都心より、緑があり風に揺れる木々が暑さを少し和らげてくれます。美術館の庭の木々もまた木陰を作り和ませてくれ、エントランスを入ると爽やかな色彩の葉祥明作品が迎えてくれ、心がほっとする空間が広がります。

 開催中の企画展「オレンジ色のペンギン」は2003年に描かれた絵本です。氷の世界に住むペンギンのお話で、その色彩は氷の世界を透き通るブルーで描いています。雪国のお話ですので、冬に展示をする事が多かったのですがあえて「夏」に展示を決めました。暑い夏に、爽やかな絵をみて涼むのも一考かと思います。

またこの絵本に込められたメッセージは、とても感慨深い素晴らしい物です。
全身オレンジ色で生まれたペンギンの子”ジェイムズ”はどうして自分だけがオレンジ色なのか、その理由は分かりませんでした。でもある時、その訳がわかる出来事がおこります。詳しい内容は是非、作品をお読み下さい。ページをめくり、一点一点の作品を見ることで、より理解が深まると思います。ご自身の心にすっとメッセージが流れ込む瞬間を是非、体感して下さい。

葉祥明がこの本に以前寄せたコメントがあります、「自分のもっている、人と違う部分を大切にしていればそれが生かされる時が必ずくる。”あなたは特別なのよ”と幼いときに親から言われて大切にされていたら、変わっているところが自分の弱点ではなく、自分がこの世にいてよい、この世に歓迎されているという確信になります。だからそういう子は自分の自信を持って生きていくことが出来ると思うのです。」
葉祥明が絵本で伝えたい事はたくさんあります。環境問題や平和などもそうです、そのため一冊づつにテーマを変えて多くの絵本を描いてきました。ですがその多岐にわたりメッセージの根底にあるのは、生きることの喜びや幸せです。

「オレンジ色のペンギン」の最後に『だれもが、なにか大切な役割をもってこの世に生まれてきたこと、忘れないでね』という一文で終わります。生まれ…生きる…と言うこと。

その中にある喜びや幸せを、子どもから大人まで沢山の方にこのメッセージを受け取っていただければ幸いです。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2013年7月20日(土) ~ 9月20日(金)
葉祥明の
「オレンジいろのペンギン」絵本原画展

葉祥明美術館
学芸員 長井