葉祥明美術館

オススメ Vol.58「渡り鳥からのメッセージ」

葉祥明という作家は、様々な事…政治や生活、宇宙や魂、人間や動物、自然や環境と、色々な思いを胸に制作をしています。そして、その思いが優しく伝わるように作品を完成させていくように思います。今回の企画展「渡り鳥からのメッセージ」は自然と人間、渡り鳥たちが織りなす共生・調和を描いていますが、これまでも「森が海をつくる」「空気さんありがとう」「ジェイクと海のなかまたち」など自然と人間の関係を描いた作品があります。これらは地球全体の中で起こっている事を易しく教え、自分たちがどうすべきなのかを考えるきっかけを与えてくれました。それに対し「渡り鳥からのメッセージは」宮城県大崎市の蕪栗沼という場所を舞台にしたお話で、実際に地域の人たちが行い、自然と共生している現在のお話です。葉が作品の中で訴え続けている、自然や動物たちへの想い、人の行いが現実となり実を結んでいる素晴らしい例です。

葉自身、何度も蕪栗沼に訪れ 渡り鳥の壮大な光景を目の当たりにしました。
そして改めて、人間が大自然の中の小さな存在に過ぎない事を思い知らされたと言います。その意識が、あらゆる事に対し謙虚にそして誠実に向き合おうとする作家の思いにつながるのだと感じます。

力強く広大な自然の中で生きる渡り鳥たち、その営みに同じ地球の仲間として協力する人々。「自然と文明は決して調和できないことではないのです」(本文中より)。
この感動的な作品をご覧頂き、私たち”人”の在り方を考えるきっかけとなれば幸いです。

※「渡り鳥からのメッセージ」(自由国民社刊)は宮崎県大崎市にある、ラムサール条約湿地「蕪栗沼・周辺水田」を中心に、生き物との共生や地域活性を目指す取り組みの一環として制作されました。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2013年9月21日(土) ~ 11月22日(金)
「渡り鳥からのメッセージ」展

葉祥明美術館
学芸員 長井