葉祥明美術館

オススメ Vol.61「ありがとう 愛を!」

絵本作家として知られていますが、葉祥明は色々なジャンルの書籍を発表してきました。中でも様々な想いを込めた、メッセージ本を多く手がけています。環境問題や社会問題から心の問題まで、メッセージの内容は多岐にわたります。心の問題は、個性への尊重(「オレンジ色のペンギン」(佼成出版社))や自己の肯定(「ヒーリング・キャット」(晶文社))などで、安心感を得られる作品がありますが、今回ご紹介したい「ありがとう 愛を!」(中央法規出版)は入り口が少し異なります。書籍の帯に紹介していますとおり「赤ちゃんを亡くしたすべてのお母さんに伝えたい子どもたちの思い」という内容です。

お腹の中で宿った命がその中だけで人生を終えるという事…、そのような自分の理解を超えた出来事に対して、葉祥明の絵と言葉が伝えるメッセージは、苦しみや悲しみの中にいる方に寄り添ってくれます。本文中にある「母と子の愛のきずなは永遠です」このメッセージは、全ての人に通ずるメッセージです。どこにいても、親子の愛の絆が永遠であることを私たちは心に留め感謝をしていかなくてはなりません。当たり前の出来事が当たり前ではなく…思いがけない出来事に対峙したときの自分は犠牲者でも罪人でもない。そんな考えをこの作品を通して感じる事ができます。「人生に起こることは全て、大いなる意味があるのです。」後書きに記す葉祥明の言葉が、心に響く余韻が残ります。

葉祥明の包み込む優しさが溢れる作品と、綴る言葉の数々をご覧下さい。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2014年3月14日(土) ~ 4月25日(金)
母と子の合い、永遠の絆を描いた 葉祥明の原画展
「ありがとう 愛を!」

葉祥明美術館
学芸員 長井