葉祥明美術館

オススメ Vol.65「あおいしか」

企画展示室で開催中の絵本原画展「あおいしか」では、絵本に掲載されている18点の作品が全展展示されています。

 「あおいしか」は2000年の11月に出版されてから、14年の歳月が経ちました。葉祥明の絵本を多数出版している佼成出版社から出された作品ですが、中でも「あおいしか」「しろいおおかみ」「オレンジいろのペンギン」はタイトルからもお分かり頂けるように“色”と“動物”の組み合わせで展開される絵本シリーズです。そのどれもに深いメッセージが込められています。

 「あおいしか」は“青い星”と呼ばれる球で多く目にする「青」、当たり前に目にする海や空の青が、失われつつある現状を描いています。そして「青」を守るために私達自身の生活や考え方を、改めて見つめ直すきっかけを提起しているお話です。

 実在し、今は絶滅してしまったブルーバックという動物を題材に、鹿の親子の会話で進むお話は「おとぎ話」のような「現実」のような…不思議な感覚を覚えます。それは葉祥明の絵本でたびたび感じる事ですが、子供たちに親しみと共感が持てるように動物たちに現実の問題を語らせるという手法からかもしれません。絵本の世界と現実を行き来しながら、この作品からメッセージを受け取ってほしいという作家の思いを感じます。

 本展開催にあたり、来場の皆様に作家からのメッセージ…
 『この人間社会では、正しいことを言ったり、考えたり。正しいことをしたりしても、しばしば無視されたり、非難されたりすることがあります。しかし、人はそれぞれ自分の信念に従って生きるべきです。分かり易く言えば、人は常に“自分らしく”生きるべきだっていうことを伝えたい。』

 物語は「あおいしかは、みんなの心の中にきっといるよ…」という言葉で締めくくられます。自分の中の「あおいしか」を探してみてはいかがでしょうか。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2014年11月22日(土) ~ 2015年1月23日(金)
 葉祥明の絵本原画展
「あおいしか」

葉祥明美術館
学芸員 長井