葉祥明美術館

オススメ Vol.67「にじいろのみち -風がはこぶ物語-」展

企画展示室で開催中の「新作絵本『にじいろのみち』原画展」。本作は熊本朝日放送開局25周年記念に向けて制作されたものです。

 最初に絵本制作の依頼があったのは2013年の秋頃。色々と構想が練られる中で、故郷・熊本を舞台にした絵本作りがスタートします。

制作にあたり、いつもですと絵本を描く為に取材に行く、という事はあまりしない葉祥明。描くときは本などの資料から素材を探求し、アトリエで静かに描きます。ですが「是非ご覧下さい」とお誘いがあり、外に出かけることもしばしば…。今回は特に‘絵本が出来るまで’を取材する!という試みをあり、取材の機会が多くありました。

 取材とは言え「熊本」は葉の故郷。幼少期、親しんだ場所です。それでも5回に渡り行われた取材は、新たな発見の連続でした。2014年3月に1回目、このときは‘野焼き’を初めて目の前で体験し その迫力に圧倒されたと言います。5月の取材では天草を訪れ、イルカの群れと出会いました。今までイルカの絵を沢山描いていますが、実は自然のイルカを見るのはこの時が初めて。他にも渓谷や棚田、夏に咲く草花…初めて見るものも多くありました。改めて故郷を再発見し、素晴らしさを再認識する事となります。

その感動を一冊の絵本にまとめた「にじいろのみち」。ふるさとの原風景を伝える素晴らしいものになりました。本作を見て、未だ見ぬ日本の知られざる魅力を感じ、実際に旅に出よう!と感じて下されば…と作家の思いが溢れます。ぜひこの機会に原画作品に触れ、故郷に流れる風を感じて下さい。

また、取材風景を映像に収めるという事は、葉自身にとって貴重な経験であると同時に大変な作業であったとも言えます。その姿を記録した映像は大切な資料ともなりました。
2015年2月に放映された番組をご覧になった方から「感動した」というお声を頂戴することもしばしば…。残念ながら放映は限られた地域のみですが、当館のブログにその様子が掲載されていますのでご興味のある方はご覧下さい。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2015年3月14日(土) ~ 5月15日 (金)
「にじいろのみち -風がはこぶ物語-」展



葉祥明美術館
学芸員 長井