葉祥明美術館

オススメ Vol.68 葉祥明が描く深く青い海の世界へ 「ドルフィン・メッセージ」展

2014年に出版された「ドルフィン・メッセージ」は葉祥明が長年、描きたいと暖めていた作品です。あとがきに「ジャック・マイヨールに捧ぐ」とある様に、映画「グラン・ブルー」の主人公のモデルになった、ジャック・マイヨールに捧げた作品でもあります。

葉祥明のあとがきから、葉祥明とジャックの出会いをご紹介します。

『映画「グラン・ブルー」の主人公のモデルになった、ジャッ・マイヨールと偶然出会ったのは、かつて東京・銀座にあったイエナ洋書店内だった。

 目の前の本棚にだれかが落とした雑誌の「ドサッ」という思いがけない大きな音に、一人おいた隣にいた、一人の外国人の男性が当人も驚いていて、思わず互いに顔をあわせた。「あ、あの有名なジャック・マイヨールだ!」とすぐにわかった。ぼくは一瞬、銀座が深い海の中の水中都市で、そこでイルカに出会ったような気がした。そう思わせるくらい、彼はたぶん世界のどこにいても「海」を身にまとって、生きていたのだろう。

(中略)

 彼と接した人はだれでも、彼は「イルカ人間」だという。たしかに彼は、イルカのように人間社会を泳ぎ抜いた。彼自身も、イルカのように自由に自分らしく生きよと、世界の至るところで彼を慕う若者や女性に情熱的に語った。

 最晩年はしばしば、思うようにならない老いた身体を嘆いたり、世間に対して憤慨したりしていたが、自分自身がイルカであることだけはやめなかった。

 彼は自らの意思でこの世を去った。映画「グラン・ブルー」のラストシーンで主人公が自ら暗く深い海の底へ去ったように。
 彼のその生き方自体が、彼のメッセージだった。
 ぼくは、ぼくなりに、彼から受け取ったそのメッセージをこの絵本で皆に伝えたいと思う。この本の中の、青い海とイルカの声に耳を傾けてくれたらぼくは嬉しい。たぶん、ジャックも・・・。』
絵本の中で、何度も「生きるということ」「自分」「人生について」語りかけます。ジャックに捧げた作品は、たくさんの人に「自由に自分らしく生きよう!」というメッセージを伝えています。それは澄んだ青、深い青の世界を描いた画面からも聞こえてくるようです。
葉祥明の描く、深く青い海の世界をご堪能下さい。

■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2015年5月16日 (土) ~ 7月17日 (金)
葉祥明が描く深く青い海の世界へ
「ドルフィン・メッセージ」展



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学芸員 長井