葉祥明美術館

オススメ Vol.78「サニーちゃん、シリアに行く」

 
絵本作家・葉祥明が絵本『地雷ではなく花をください』(自由国民社)を1996年に出版してから20年以上が経ちました。うさぎのサニーちゃんが「平和な世界をみんなでめざそう」と世界の地雷問題や私たちに出来ることを優しく教えてくれたこの絵本は、売上金が地雷撤去・不発弾除去に使われるという新しいボランティアのカタチを生み出しました。その後、カンボジア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アフガニスタンなど戦争・紛争地域を舞台にした続編が全5巻シリーズとして出版され、累計61万部を越える絵本が沢山の方の手に渡り、支援へと繋がりました。世界各地の約 東京ドーム567個分の土地の安全確保と、100万を超える人びとに地雷や不発弾を回避する教育活動を行いこの20年の間に、地雷問題は解決に向かって進んでいます。

これまでの5作品は当時のAAR Japan[難民を助ける会]理事長の柳瀬房子さんが文章を書いていますが、この度 出版された「サニーちゃん、シリアに行く」は現理事長・長有紀枝さんが文章を綴りました。『「地雷ではなく花をください」から20年の節目ということよりも、シリアの内戦が始まって6年目に入るのに先が見えないことで執筆を決めた』と言います。物語に登場する子ども達は、長さんが実際に出会った難民の子供たちがモデルです。
2011年に始まったシリア紛争の戦闘激化により地雷汚染の問題が生まれ、多くの方が難民となりました。紛争は、宗教・政治・国と様々な要素が絡み複雑化し、長期化しています。
今まで平和に暮らしていた自分たちと同じような人たちが、紛争により難民となり今も不自由な暮らしを余儀なくされています。問題が長期化し深刻化するに連れ、風化しがちな難民問題は難民の方々をより困難な状況とします。
「サニーちゃん、シリアに行く」の文中に少女が『忘れないで』と言います。この絵本を手元に置き、私たちが忘れないことが支援の一歩となる。そう訴える長さんの気持ちが少しでも多くの方に伝わればと思います。



■北鎌倉葉祥明美術館企画展 2017年1/21 (土) ~ 3/10 (金)
絵本原画展・今起きている紛争のこと…難民問題を考える
「サニーちゃん、シリアに行く」

葉祥明美術館
学芸員 長井