葉祥明美術館

オススメVol.81「きみに聞いてほしい」

絵本「きみに聞いてほしい」は 2016年5月17日、第44代アメリカ合衆国大統領のオバマ氏が現職のアメリカ大統領としては初めて被爆地・広島を訪れ、「核兵器のない世界」に向けたスピーチを絵本にしたものです。翻訳をジャーナリストの池上彰さんが行い、葉祥明が絵を描きました。「世界から核兵器をなくすために努力しよう」と呼びかけたこの演説を、未来を生きる子ども達にも広めたいという思いから「絵本」となりました。
 
「絵本」は絵に言葉が添えられた物で、一般的には子どもの読み物とされています。しかし近年では、絵本の伝えるメッセージと芸術性の高さから大人も絵本に親しむ傾向にあります。葉祥明の絵本も対象年齢が「0歳から100歳まで」と紹介されるなど、その内容の奥深さと、添えられる絵の質の高さから老若男女問わず、親しまれています。
 
 そんな中「きみに聞いてほしい」の依頼が舞い込みます。平和を願う歴史的なスピーチを絵本にする、その絵を葉祥明が描く事により多くの人に大切な想いが届く素晴らしい企画です。葉自身も「地雷ではなく花をください」を始め「あの夏の日」など、平和や命の大切さをテーマにした絵本を手掛けています。今回の依頼は打って付けでした。
 しかし、描き始めると戸惑いと苦悩の連続でした。葉は作品を描くにあたり、様々な本を読むなど色々と調べてから制作します。原子爆弾という恐ろしい兵器と、戦争の惨状のイメージを追体験し、それらを描きました。しかしそれはこの絵本の目指すものではないと感じ、この絵本に相応しい現在の表現に至ったと言います。
 
 葉祥明の葛藤、またスピーチをされたオバマ元大統領の言葉にも複雑な葛藤や願いが込められ、それらが絵として表現されました。さらに、守るべき全ての尊い命と それを支える大自然の悠久の営みを描き、平和への願いと命の大切さも伝えています。
 池上彰さんの分かり易く翻訳された言葉と、葉祥明の絵によって作られた絵本「きみに聞いてほしい」。多くの方に伝えたい1冊です。
 
 
北鎌倉葉祥明美術館企画展 2017年7/15 (土) ~ 9/15 (金)
葉祥明絵本原画展
「きみに聞いてほしいー広島に来た大統領ー」展