葉祥明美術館

オススメVol.80 「星の王子さま」

サン=テグジュペリ著の「星の王子さま」は世界中で愛されている名作です。葉祥明もその世界に魅了された一人。ミュージカルや映画化されると必ず観にいくほど大好きな作品です。物語に出てくる「大切なものは、目に見えない」など、その言葉の数々は葉祥明自身に影響を与えました。

 小さな星の王子さまが主人公のこのお話は、バラやキツネ・それぞれの星の住人など他の登場人物も特長的なキャラクターばかりです。この面白い登場人物を追いかけると、ファンタジックな童話のようですが、彼らの会話が奥深い。実は人間の心理に深く疑問を投げかけるような事を話しています。

 葉祥明が描く絵本も、その内容は人間・生き物・地球にとって大切なものは何かを問う、心理を追求する作品が数多くあります。「しあわせってなに?」「自分って」「いのちとは」etc.。世界観に共通する物を感じていた、そんな葉祥明は常々「星の王子さま」の絵本を描きたいと思っていました。過去には短編の「星の王子さまがもどってきた」(1978年5月号「いちご絵本」掲載)や、新訳「星の王子さま」(ごまブックス)など挿絵を手掛けた事はありましたが、“絵本”の形で本格的に制作されたのは本作が初めての事です。作品に対する思いが強く、通常絵本を描くときには20点前後の作品数が、「星の王子さま」は小さいものも合わせると60点にも上ります。使用されなかった作品を合わせるともっと多い!力の入れようが伺えます。しかし絵本にはページ数に限りがあり、星の王子さまのすべてのエピソードを絵本にする事ができませんでした。それが逆に厳選されたストーリー展開となり、奥深いお話の導入としてこの上なく良い作品が出来たと思います。

興味があるけど難しそうと思っている方や、子供にも是非 手にとって頂きたい1冊です。



北鎌倉葉祥明美術館企画展 2017年5/20 (土) ~ 7/14 (金)
葉祥明の世界の名作絵本シリーズ
「星の王子さま~The little Prince~」絵本原画展