葉祥明美術館

おすすめVol.106【ちいさなジーコ】

  
企画展開催中の新刊絵本原画展「ちいさなジーコ せかいでいちばんたいせつなもの」。
まず、葉祥明作品に馴染みのある方は「葉祥明がサッカーの、しかもジーコのお話を何故!?」と思われることでしょう。経緯はこうです、葉祥明と編集者として長年のお付き合いのある ひらまつりつこさん。ひらまつさんが、ジーコさんの取材をされ「次世代へジーコの想いを伝えたい」と、絵本のお話を執筆されました。葉祥明作品をとても愛おしんでくださる ひらまつさんは「絵は葉祥明さんしかいない」と、お声掛けくださり「葉祥明・絵」のジーコさんの絵本が誕生しました。
 ジーコさんが鹿島アントラーズでご活躍されているのは有名なお話ですが、鹿島アントラーズを支えてきたスピリット・オブ・ジーコ「献身・誠実・尊重」は、ジーコさんが人生のモットーとしているものです。その言葉に思いを寄せて物語が書かれています。本文中では、その考え方を伝える方法として「たいせつなもの」を少年・ジーコに問う場面があります。「このせかいで いちばん あたたかいものは なんだとおもう?」「このせかいで いちばん とうといものは なんだと おもう?」「このせかいで いちばん うつくしいものは なんだと おもう?」この問いに葉祥明独自の答えを聞きました。「あたたかいもの」は“人の心”、「とうといもの」は“全ての いのち”、「うつくしいもの」は“地球とその大自然、生きとし生けるもの全て”。表現は違いますが、スピリット・オブ・ジーコやひらまつさんが絵本で伝えたかったメッセージと繋がる答えですね。葉祥明がこの絵本を手掛けた意義を感じます。
 
 この作品を通して、各自それぞれの「あたたかいもの」「とうといもの」「うつくしいもの」を考えてみるのも良いかもしれません。その際には是非、葉祥明の描く世界を観ながら考えて頂ければと思います。難しく考えてしまいがちな問題も、優しく包み込んでくれます・・・。
 
 
■北鎌倉 葉祥明美術館 企画展 2021年7月31日〜10月1日
新作絵本原画展『ちいさなジーコ せかいでいちばんたいせつなもの』