葉祥明美術館

オススメVol.96【マザーグースのうた2】

 
開催中の企画展「マザーグースのうた2」は昨年に続き、マザーグースを題材にした絵本の第2弾を記念して開催されています。昨年は、「キラキラ星」や「ハンプティダンプティ」「メリーさんのひつじ」など、日本でもよく知られている曲を比較的多く集め、初めて「マザーグース」に触れる方にもなじみやすい作品群でした。そもそも「マザーグース」とはイギリスやアメリカを中心に親しまれている英語の童謡集の総称です。 その童謡の数は数百から数千とも言われています。第2弾の本作は、遊び歌が中心です。私達に耳慣れたものから、イギリスでは誰もが知っているけれど日本では余り知られていないものまで様々です。そこに添えられた葉祥明の絵は、特有の優しさと穏やかさがある中で、楽しげです。
 
色々なシチュエーションがある歌を一枚の絵で表現する事に、葉祥明は楽しい一方で苦労もした様子でした。「Incy Wincy Spider」では蜘蛛を描いていますが、特定のものを描く時デッサンをしながら描く傾向があるため、最初は蜘蛛がリアルに怖くなってしまったそう。描き直してシンプルな蜘蛛になりましたが、あまどいを上る蜘蛛はやはり「自分らしくない」一場面だったようです。それでも「The Farmer’s in His Den」などスコットランド谷間を描いた景色は、真っ直ぐな地平線を描くことが多い氏の作風とは異なり湾曲した大地が描かれ、谷間の景色に奥行きと広がりを生んだ素晴らしい作品です。本人も楽しく描き、お気に入りの一作となりました。他にもかつて住んでみたいと思った家を思い出しながら描いた「Ring the Bell!」など、マザーグースという題材を得たからこそ描く事のできた作品が並びます。
 
 また、巻末にある曲の解説(著:鷲津名都江)に添えられた手遊びの指示イラストも葉祥明が描いています。あまりこの手のイラストは描かないですが、要望に真摯に答え描いていました。出来上がった絵本を拝見した時、やっぱり上手だなと素直に思います。作家の頑張りはこの一冊の本にしっかりと活かされています!
 
 詩の解説と監修は前回同様、鷲津名都江先生です。曲の背景やリズムについてなど、とても分かり易く興味深い事ばかりです。原画展では紹介仕切れない箇所があり残念ですが、絵本には充実した内容が書かれています。葉祥明の原画展を見た後に、ぜひ絵本もご覧下さい。

 
北鎌倉 葉祥明美術館 企画展「マザーグースのうた2」
2019年11月30日〜2020年1月31日