葉祥明美術館

おすすめVol.114【DARK BLUE そして、光へ】


 
  葉祥明という作家は、いくつもの面を持っていると思います。作品を観ても、デビュー当初の牧歌的な絵本から、メルヘンを感じるパステル調の風景画、だれでも「可愛い」「綺麗」と思う作品を描く中で、深い濃い色彩の中に一見すると何だか分からないような不思議なモチーフを配する作品などもあります。デフォルメされた可愛らしい動物を描いたり、緻密で写実的な動物が佇むシャープな風景を描いたり…。その様々な作風の中でも、一貫して感じる事もあります、そのひとつが光です。
野原に青い空を描く作品には、当たり前のように陽の光や暖かみを感じます。しかし葉祥明の絵には、海の中を描いても、夜を描いても宇宙を描いても「光」を感じます。どんなに濃い色彩で埋められた画面でも、漆黒の闇では無く どこか希望が持てるような印象を受けるのです。
 描き方の話しをすると…黒くはせず、どんなに暗い夜でも宇宙でも色は濃紺を意識していると言います。また、隠し味のように少し黄色を加える事でまろやかな色合いになるとか…。

ですが油彩画「Amazing Planet」について、画集『葉祥明美術館』(作品社刊)ではこのように触れています。【地平線付近の青白いグラデーションは、ごく普通の油絵具を使って描いたものなのですが、実際に何か不思議な光を放っているように見えます。このことは、描いた僕自身にも大きな驚きでした。】本人が意図せずとも「光」をどこかで意識している結果でしょうか。どの作品を観ても、葉祥明の作品に光を感じるのに納得してしまいます。
 
開催中の「DARK BLUE そして、光へ」は、“深いブルーの中だからこそ より光を感じる本を”というコンセプトで作られた詩画集の作品展です。今まで描いてき作品の中から、深い青の作品を選出し、編成しています。中には本作のために描きおろされた作品もあります。深い青の世界から感じる光が、夜明けのように光が溢れる作品への展開する校正は、綴られた言葉と共に“静寂”“調和”“平和”“希望”の光を受け取れます。
 本展開催にあたり改めて葉祥明作品には観る人に希望を与える、あたたかい光を感じる魅力があると再認識致しました。「深いブルー」に込められた「光」が多くの方に届く事を願います。
 

 
■北鎌倉 葉祥明美術館 企画展 2022年12月3日〜2023年1月28日
葉祥明画業50周年ー新刊原画展『DARK BLUE そして、光へ』