葉祥明美術館

おすすめVol.117


 
  葉祥明が1973年に絵本『ぼくのべんちにしろいとり』で絵本作家とデビューしてから今年2023年で五十年です。葉祥明の画業を振り返ると、絵本作家として世に出た後に雑誌『詩とメルヘン』と『いちごえほん』に掲載したことが、飛躍のきっかけのように思います。アンパンマンの作者としても有名なやなせたかし氏と、当時のサンリオ社長・辻信太郎氏が作った文芸誌『詩とメルヘン』は葉祥明のデビュー年と同じ1973年に創刊されました。葉祥明が最初に掲載したのは『詩とメルヘン』のジュニア版『いちごえほん』の1975年9月号です。それ以降、両雑誌に数多のイラスト描きました。そして度々、特集が組まれ葉祥明作品が世の中に広まっていきます。同誌の中で、やなせたかし氏と葉祥明が対談をしています。1981年3月と1990年8月の『詩とメルヘン』臨時増刊号「葉祥明の世界」にその様子が紹介されています。「うまい絵って何だろう?」というテーマで語られた二人の対話はとても興味深く、その中でやなせ氏は葉祥明の事を「空気部分を描く人は少ない」や、画家には詩人の魂がなければといい「葉祥明の世界は空間があるだけなのですが、どういうわけかちょっと違う。それが詩人の魂だと思う」など評価しています。
 
葉祥明に最初に掲載の依頼があった頃、本人は締め切りに追われる生活がこわく、断るつもりが廊下でばったりと出会ったやなせ氏に「君、いい人そうだからやってもらいましょう」と言われ、突然で「はい」と答えたのがはじまりだそうです。やなせたかし氏のひと言が葉祥明の運命のひと声だったようです。その後、同誌の発行元である株式会社サンリオから葉祥明の画集が出版され、ますます葉祥明作品が多くの人の目に触れることになりました。
 
 画業五十年の本年、この頃の葉祥明作品を振り返り『Yoh Shomei 詩とメルヘンの世界』を北鎌倉 葉祥明美術館より刊行しました。『詩とメルヘン』『いちごえほん』に掲載された作品や、当時グッズに展開された作品など懐かし絵を紹介しています。また、上述のやなせたかし氏と葉祥明の対談や、絵本にはなっていない当時雑誌に掲載された葉祥明書き下ろしの物語「星の王子さまがもどってきた」なども掲載しています。是非ご覧頂ければ幸いです。
 

 
■北鎌倉 葉祥明美術館 企画展 2023年6月10日〜8月4日
葉祥明・画業50周年_YOH Shomei 詩とメルヘンの世界、いちごえほん も