葉祥明美術館

おすすめVol.120


 
 北鎌倉 葉祥明美術館の展示内容は、学芸職員が企画し、館長に承諾を得た後に葉祥明先生(以下:葉)に許諾を得る流れになっています。(希に葉からこんな展示を見てみたいと提案を受けることもあります。)ただ、企画をする際には、予てより葉との対話で受けとる作家の意向を汲むように努めています。
 開催中の「葉祥明の真髄 油彩画の世界」展は作家の意向を大いに汲んだ企画です。葉祥明はこれから目指したい方向が油彩画で描いた世界観の先にあることを良く話題にします。
葉の中では壮大な思想が広がっています。目指すのが「ニュートンの万有引力」や「アルタミラの洞窟画」のように、人の意識を隔離させるような…新しい境地にいくような…そんな感覚を呼び起こさせる絵を描きたいと。
それは「客観的な経験論よりも、主観的な直観を強調する。その中核は、人間に内在する善と自然への信頼である(wiki引用)」超絶主義(トランセンデンタリズム)の思想に通ずると言います。壮大すぎて追いつくのが大変ですが、超絶主義はドイツロマン主義の思想と親密と言われます。葉祥明は絵画でもターナーやフリードリッヒなどロマン派を好みます。自身が描くメルヘン画や絵本でも多くを説明するのではなく、鑑賞者それぞれの受け止める感覚を尊重する作風で、感受性に重きを置くロマン主義に通じます。様々な作風の中でも、本人の思想は一貫しているのです。
 
葉に企画展のタイトル了承を得る為に提示した当初は「葉祥明の神髄 油彩画展」。”神髄”と”真髄”の違いです。私がシンズイと表現したかったことは、油彩画の世界感が葉祥明の思想の核となるもの、精神的な中心であると伝えたかったから。漢字は深く考えていなかったのですが、葉いわく「これから極めたいと思う事もあり、神髄といわれると頂点まで達している印象を受ける」と。「真髄」が良いと言うことになりました。
ロマン主義絵画を追求する77歳の画家・葉祥明のこれからが楽しみです。
 
 
「葉祥明の真髄」油彩画の世界、作品の注釈も葉自身の言葉を紹介しています。
作家の思想を垣間見られる本展に是非お運び下さい。
 
 
 
■北鎌倉 葉祥明美術館 企画展 2023年12月9日〜2024年2月9日
葉祥明の真髄 油彩画の世界