葉祥明美術館

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【企画展】葉祥明「詩とメルヘンの世界」Part 2 開催にあたって
 
 雑誌『詩とメルヘン』は詩をこよなく愛する辻信太郎氏(当時サンリオ社長)とやなせたかし氏の二人が1973年から2003年までの30年にわたり世に送り出し愛され続けた、日本の出版史における特筆すべき媒体です。
 
 創刊当時、やなせ氏は漫画家として活動しながら様々な仕事をこなし、詩も書いていました。この詩に感銘を受けた辻氏が詩集『愛する歌』を出版したのがきっかけでサンリオ(当時は山梨シルクセンター)に出版部ができます。サンリオ出版の第一号書籍です。この詩集も大変人気で1960年代後半から1991年の間に第5集まで刊行され多くの読者に親しまれました。その潮流が後の『詩とメルヘン』創刊へと結実します。1970年代の出版界は華美な情報誌が主流でしたが、やなせ氏の想いに応え辻氏は「月二百万円の赤字までは耐えられる。」と刊行に踏み切ったといいます(2003年『詩とメルヘン』8月号 惜別永久保存版参照)。赤字覚悟の出版とは、そうそう出来ません。辻氏の先見の明と、詩への愛情、二人の信頼関係が伝わってきます。
志を同じくする二人の歩が、後に葉祥明ら数多くのイラストレーターや作家を輩出し、今も多くの人々の心に刻まれる雑誌となりました。
 
 2023年、葉祥明のデビュー50周年を記念し、特別展「Yoh Shomei 詩とメルヘンの世界」を開催しました。葉祥明にとって、メルヘン作家としての地位を確立する契機となったのが『詩とメルヘン』であり、辻氏とやなせ氏との出会いが葉祥明のその後の作家活動に大きな影響を与えます。葉祥明の画業を俯瞰すると、多くの作品がサンリオ出版から刊行されており、「いちご新聞」での長期連載など、その関係の深さを確認できます。昨年はその「いちご新聞」創刊50年に合わせて葉祥明の「いちご新聞」掲載作品をまとめた作品集を刊行しました。
本展「Part 2」では、昨今のやなせたかし氏への再注目を受け、改めてその原点を見つめ直す展示となりました。前回とはまた違う、心洗われるひとときをお過ごしください。
 
 
■北鎌倉 葉祥明美術館 企画展 2026年1/17(土) 〜 3/20 (金)
葉祥明の『詩とメルヘンの世界』 Part2