葉祥明美術館

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【企画展】YOH Shomei 心に響く言葉の世界 開催にあたり…
 
葉祥明の詩作について、実は二種類あります。本人よると明確に異なるその内容は、二・三十代の頃に綴られたものと、四・五十代に書かれたものを読み比べると瞭然です。若い頃に多く綴ったものを「poem(詩)」とよび、後に多く書かれたものを「words & verse(言葉)」とよんでいます。詩は日々の生活、自身の内面や人生観を表現した、私的な世界で1970年代後半から1980年代に刊行された詩画集『遠い日の夢』(サンリオ)や『ありがとう そよ風』(銀の鈴社)に見られます。対して言葉は、普遍的な真理のようなものを率直に伝えていますが、これは私的とは相反する「上から降りてくる」言葉を書き留めている感覚です。「言葉のデッサン」ともいうその表現は、より視覚的に留めるために絵画表現の際に葉祥明が好んで用いるダーマトグラフ(三菱鉛筆)でクロッキー帳に描かれています。その手書き言葉が編集されたのが詩画集『心に響く声』『心に響く言葉』『心に響く祈り』(いずれも愛育社)です。その内容は〈微笑みが 人を癒す 優しいひと言が 人を救う〉のようにいつでも、どこでも変わらない真実や 正直で公平な価値観を見いだしています。
この度、愛育社で刊行された『心に響く〜』シリーズを再編し一冊の図録にまとめました。開催中の企画展【YOH Shomei心に響く言葉の世界】では直筆の言葉を展示しています。実は刊行した図録の元となった初期の直筆原稿の所在が分かっておらず、本展で展示している直筆の中には改めて描き下ろされたものが含まれています。前述したとおりその時に降りてきたものを形にするため、以前の表現とはが微妙に異なる箇所もあります。刊行物と展示作品を見比べ、現代作家の「生きた言葉」の揺らぎを探してみるのも、本展ならではの楽しみ方です。
 
 
と、明確に区分された葉祥明の詩作ですが「words & verse(言葉)」として表現された中にも私的な印象を受ける作品もあります。図録編集にあたり葉祥明本人に調査研究にご協力頂いた際にも、いくつかの言葉を読みながら、ご本人も「コレは私的(詩的)な部分も含まれてるね」と混在している作品がいくつもありました。たくさんの私的な詩作で培った息吹が、葉祥明フィルターを通して、普遍的な真理を綴る言葉にも息づいています。詩や言葉に共通する「率直・素朴・素直」な姿勢が葉祥明の言葉として一貫しているように思います。絵画作品でも、油彩・水彩・デッサン等いかなる技法を通しても画面には「生きた空間(そこに在る空気感)」があります。それらすべてに、葉祥明という作家の確固たる芯を感じます。その揺るぎない作家性を改めて再認識する機会となりました。
 
 
■北鎌倉 葉祥明美術館 企画展 2026年4/25(土) 〜 7/24 (金)
YOH Shomei 心に響く言葉の世界