葉祥明美術館

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葉祥明が絵本作家としてデビューしたのが1973年、来年2023年には画業五十年を迎えます。半世紀もの間、描き続け数多くの絵本・詩画集を出版し、全国で講演会・原画展を開催してきました。今年で76歳になる現役の氏は、常に身近な幸せから世界の平和、宇宙への関心など多岐にわたる出来事に心を配り、絵や言葉にしてきました。
 
 葉祥明は様々な事を膨大な読書で探求し、作品へと昇華していきます。「基本的には僕は読書です。死に関する本、その前はエコロジー、その前は原発というように。そうやってスピリチュアルリズムや神智学、スウェーデンボルグやエドガー・ケイシーに出会うのです。ですから膨大な読書をしまして、或る分野で検証して、より正しいと思えるものを探求していったんです。そして大切な真理探究のものさしにスピリチュアルリズムを道具としてつかっているのです。」(『葉祥明の世界』本文インタビューより)。こう述べているように、葉祥明の世界観の一つに、スピリチュアリズムがありますが、メルヘン作家のイメージが強い葉祥明の世界を思うと「そのギャップに少し戸惑うひともいるかもしれない」と葉祥明自身も語っています。
 
 デビューからメルヘンブームを経て多忙を極める中、体調を崩しがちになり心身の安寧を求めるように、自身の内面の思想や哲学を探究し、より深い精神性を追い求めた油彩画等を制作し始めたのが1980年代前半頃。その後、1986年のチェルノブイリ原発事故に衝撃を受け、社会問題や環境問題等と自身の思想と、求められる優しい絵が融合した絵本を手掛けて世に発信していきます。真理探究のメッセージとメルヘンの両面を持つ作品群です。
 
 企画展「葉祥明の世界-幸せへの道案内人-」では、数ある作品の中から葉祥明の目指してきた事が垣間見られる絵本作品を紹介しています。1986年の事故後に描かれ、当時は出版されずに東日本大震災の原発事故後に出版された『美しい朝に』(自由国民社刊)。エコロジカルな観点のターニングポイントとなった作品『あいのほし』(偕成社刊)。愛を伝える『おなかの赤ちゃんとお話ししようよ』(サンマーク出版)。平和を祈念し、向き合うために描かれた『サニーのお願い 地雷ではなく花を下さい』シリーズ、長崎を描いた『あの夏の日』。50年の葉祥明の心の機微を、感じて頂ければ幸いです。
 
■北鎌倉 葉祥明美術館 企画展 2022年5月28日〜7月29日
『葉祥明画業50周年に向けて 葉祥明の世界〜幸せへの道案内人〜』