葉祥明美術館

学芸員のおすすめコラム

 
 開催中の企画展「ジェイクと自然を考える SDGs」は葉祥明のオリジナルキャラクター・白い犬のジェイクが主人公の環境問題を描いた絵本を紹介し、原画のもつ魅力と一緒に環境問題を考えるきっかけを易しく伝えます。展示作品の絵本『森が海をつくる』『空気さん ありがとう』(原題:空気はだれのもの)『ジェイクと海のなかまたち』は環境三部作として、1997年から1998年にかけて発表されました。それぞれ森林伐採・大気汚染・海洋汚染などをテーマにし、自然の大切さを説いています。1970年代をメルヘン作家として広く活躍した葉祥明が、1986年のチェルノーブル原発事故をきっかけに社会問題をテーマにした絵本も描いているのは知られています。有名な作品には地雷撤去キャンペーン絵本の『地雷ではなく花をください』シリーズもあり、累計約61万部と その活動の一助となっています。戦争・貧困・差別など様々な社会問題を描く中で、特に多くの絵本を残しているのが環境問題です。実はデビュー作の『ぼくのべんちにしろいとり』も一羽の白い鳥が仲間とはぐれてしまうお話ですが、描かれた場面は灰色の空を一羽飛んでいる絵です。「排気ガスなどで汚れた空で視界が悪く、仲間とはぐれてしまった」という設定でした。その後も『そらのむこうに』『森のささやき』『イルカの星』『くんくんきみだあれ』他、環境問題がインスピレーションの元であったり、問題そのものを描いた作品など多数、手掛けていきます。作家の自然に対する敬愛の念を感じます。
 本展で紹介する三冊は、“ジェイクの環境三部作”として発刊されました。主人公の白い犬のジェイクは葉祥明のデビュー作で登場した、葉祥明の分身とも言える存在です。公園で白い鳥を助ける優しい心の持ち主で、色々な事に耳を傾け好奇心が旺盛。そんな主人公が‘空気の精’や‘海’‘川’、海の生き物たちの話しを聴きながら環境問題を学び、私達に伝えてくれるお話です。
 
2019年に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標が記載されました。「誰一人取り残さない」と強い意思と危機感から生まれた、17の目標・169個のターゲット・232個の指標から成る壮大なものです。自分自身で何が出来るか考えるときに、たくさんの向き合わなければならない問題があり、悩んでしまう事でしょう。本展では一部、SDGsの取り組みも紹介します。
 
絵本が「知る」きっかけになればと、さまざまなテーマを描き続ける葉祥明の願い。その出会いの場として北鎌倉 葉祥明美術館は葉祥明の作品を紹介し続けています。
葉祥明の絵本から身近な環境問題を知り、SDGsの資料をみて、より深く考えるきっかけとなれば幸いです。
 
■北鎌倉 葉祥明美術館 企画展 2022年7月30日〜9月30日
『葉祥明画業50周年に向けて ジェイクと自然を考えるSDGs』