葉祥明美術館

おすすめVol.108【葉祥明が描く世界の名作】

葉祥明が描く世界の名作シリーズは、英語が学べる絵本企画のひとつで現在は『星の王子さま』『赤毛のアン』『ピーターパンとウェンディ』の三作が出版されています。
 
 葉祥明はサン=テグジュペリ著の『星の王子さま』が大好きで、本シリーズで最初に描いたのもこの作品です。お話のファンタジックでありながら哲学的な真理探究の世界は、葉祥明の書くお話にも通じています。例えば絵本『ぼくははちぞう』は主人公の「はちぞう」はハチドリサイズの羽が生えたアフリカゾウの姿をしています。とても不思議な存在の中に、自己肯定や社会問題をそれとなく示しています。星の王子さまにも様々な背景をもった登場人物がいますね。
 
 『赤毛のアン』の舞台はプリンスエドワード島、カナダの東海岸にある島です。この島に実際に葉祥明が訪れた時、その風景が自分が描く世界そのままで驚いたといいます。知らずに何十年もこの島を描いていたのか…と。葉祥明が描く風景は、地平線や水平線が広がる中にポツンと家や木が描かれ穏やかな空気が画面に広がります。家を「緑の切妻屋根の家」に、灯台を描けば ますます『赤毛のアン』の世界です。葉祥明の風景画の多くは「心象風景」で実際の場所を描いていません。どの風景でも、懐かしい穏やかな気持ちになるのは、鑑賞者が想う素敵な場所を彷彿させる要素があるからでしょうか。
 
 三つ目の作品は『ピーターパンとウェンディ』。この作品は葉祥明にとって新境地でした。『星の王子さま』や『赤毛のアン』は場面一つ一つは牧歌的で穏やかです。それに対し『ピーターパンとウェンディ』は冒険・戦い、躍動感ある動きのある場面が多いお話で、葉祥明の従来のスタイルとは異なる作品です。そのため、シリーズの中で制作期間も最も長く要した作品でもありました。出来上がった作品は、葉祥明の特長である清涼感ある優しい色合いも相まって、葉祥明らしい世界の中に、空を舞い、海賊船で闘うピーターパンの物語を描き出しました。
 
 
 本シリーズではありませんが、過去には宮沢賢治の「やまなし」やグリム童話の「ブレーメンの音楽隊」などの名作も描いています。今後、どのような名作が葉祥明の世界で描かれるのか…楽しみです。
 
 
■北鎌倉 葉祥明美術館 企画展 2021年12月4日〜2022年2月4日
『葉祥明が描く 世界の名作 シリーズ』